コラム | 第35話 伊勢の名物

赤福営業再開のニュースが流れた・・・。

この頃、伊勢に行くことが増えている。

「宇治山田」という駅から程近いところに新しいスポンサーが出来たからである。

宇治山田と聞くとつい「内山田?ということは内山田洋とクールファイブか。」
と思う人は今はもう少ない。

・・・そんなことを言いたいのではなかった。

近鉄電車に乗ると様々な出来事に出くわす。
方向からしてお年寄りが多いせいかも知れない。

最初は呆けたお爺さんが後ろの席で詩吟を歌いだし、何度、隣の息子に注意されても止めないので、席を別車両に移した。

次はおばあさんとお爺さんの団体の中に一人座らされてしまった。
おばあさんは、やはり女の人である、年をとってもかまびすしい。

と、その中の一人のお爺さんが突然、倒れた。
車掌が駆けつけるとおばあさん達は
「さっきまで弁当を食べてた」
「一個まるまる食べてた」
「すごい勢いで食べてた」
「ほんとうに嬉しそうに食べていた」
などと口々に、ほとんど重要ではない情報を車掌に告げていた。

お爺さんは次の駅で駅員に抱きかかえられる様に降り、救急車で運ばれていった。

残ったおばあさん達はやはり、
「嬉しそうに弁当食べてたのにな」
「一個まるまる食べてたのにな」
「すっごい勢いで食べてたのにな」
とおよそお爺さんが倒れた事を心配しているとは思えない会話を続けていた。

和蘭鮭

やれやれである。

その日の打合せも無事終了し、干物がおいしいと聞いていたので、駅のみやげ物コーナーに買いに寄った。

好物のアジの干物を購入することにする。
「匠の技」と書かれた大きな脂ののったアジである。

電車に乗り込み、ちょっと臭うかなと思いつつ、パッケージを何気なく見てみる。

原材料:アジ(原産国オランダ)と書かれていた。
・・・あぁ、そういうこと。
そういうことなんだ。
と一人呟きつつ窓の外の伊勢の景色をながめていた。