コラム | 第10話 赤い鼻した・・・

世の中には何気なく流していて、ある瞬間にふと、ひどく気になってしまうことがある。

日曜日に家の周りを散歩していた。

最近、電飾でクリスマスの飾りをする家が増えてきた。
マンションのベランダや庭の木に色とりどりの電球でクリスマスツリーやサンタの装飾がほどこされている。

TVで何度か、家ごと飾りつけたやつを見た事があるが、一般家庭にも浸透してきたようである。

それを見ながら鼻歌を歌っていた。

♪ 真っ赤なお鼻のトナカイさんはいつもみんなの笑いもの~

・・・待てよ、確か、この赤い鼻が役に立つとサンタさんに誉められとったなぁ。
何の役に立つんだっけ?

気になるなぁ。暗い夜道で役に立つとか言ってたよなぁ。単に鼻が利くだけだったら、赤い鼻でも、黒い鼻でも、紫色に腫れ上がった鼻でも一緒やし・・・何だっけ?

赤い鼻が目印になるのかなぁ?
それは、乗ってるサンタさんにはあんまり役に立たんしなぁ。

急いで、うちに帰った。
娘がTVを見ていたので、「トナカイの赤い鼻は何の役に立つの?」と聞いてみた。
すると、娘は頭からその歌を歌い始めた。

♪ 真っ赤なお鼻のトナカイさんはいつもみんなの笑いもの

♪ でもその年のクリスマスの日サンタのおじさんは言いました

♪ 暗い夜道はぴかぴかのおまえの鼻が役に立つのさ

・・・ていうか、その鼻なに?

・・・ていうか、その鼻なに?

♪ いつも泣いてたトナカイさんは今宵こそはとよろこびました

・・・そうか、トナカイの赤い鼻はヘッドライト仕様になっとったんか。
ピカーっと夜道を照らして・・・

な、何でやねん!そんなトナカイおるかぁ、一生、泣いとけ!!

台所に移動し、冷蔵庫から、缶ビールを取り出した。

「それが、どうかしたん?」 遠くで娘の声がした。
「なんでもないよ・・・」と小さな声で答えた。